心模様と紐づいた絵、余白に広がる静寂の美
その時々の自分の心象風景を一片ずつの詩のように、絵として生み続けている越後しのさん。念写のようにして日々、彼女の手元から生まれるユニークな「自画像」には、いつも詩的な含意の膨らみと造形の愛おしさが共存しています。ユーモラスなファンタジーを描いているようで、実は現実の体験や心模様と奇妙に紐づいており、動物などのとぼけたモチーフ、余白に広がる静寂の美ともあいまって、雪が静かに心に降り積もり続けるように見るもののシンパシーを震わせていきます。上品な彩色によるアクリル画、黒の複雑な諧調を備えた紙版画作品、それぞれに民芸品的な可愛らしさが。仙台四郎展には2014年の第一回から参加していただき、紙版画の定番作品には根強い人気があって、また毎回アクリル絵具で描き下ろしていただく作品はたちまち完売となる人気です。
profile
宮城県生まれ。画材店勤務の1995年より独学で絵の制作を始め、98年にアートギャラリー「GALLERY ECHIGO」を仙台市にオープン。以後、仙台を拠点に創作活動を続けている。最近の個展に「夢の紡ぎ方」(’19年、西荻窪・ヨロコビtoギャラリー)」、「愛みたいなものを そっと」(同年、仙台市・晩翠画廊)など。その他グループ展に多数参加。おもな受賞歴に「TURNER ACRYL AWARD 2000」青葉益輝賞、「SENDAI ART ANNUAL 2005」飯沢耕太郎賞・明和電機賞など。(photo by Rie Oshinomi)