布の温かな質感と色だけが伝えられるもの
「きめこみ」とは、江戸時代から続く「木目込み人形」の手法。木に筋彫りを入れ布の端を埋め込んでいく表現方法ですが、坪島さんはこれを現代風にアレンジし、発砲スチロール(ハレパネ)に布を埋め込んで絵を作る技法に特化した独自の半立体的イラストレーションを展開しています。彼女が目にした日常の事物や季節の花々、樹木や街の風景など、カラフルな色彩バランスと布の温かみのある質感が見るものを和ませ、簡略化されている形象でありながら、描かれているモチーフの価値をしみじみと心に訴えかけるパワーが宿っています。第2回の仙台四郎展のために、今までにない四郎像2種にトライ。できた絵は工芸的な滋味が満載で、微笑ましい「世界にひとつだけの」名作になりました。
profile
つぼしまみさと。きめこみ作家。1977年生まれ。東洋美術学校グラフィックデザイン科卒業。5年間のデザイン事務所勤務を経て、「パレットクラブ」にてイラストレーションを学ぶ。以後、布を発砲スチロールパネル(ハレパネ)に埋め込み絵を描く「きめこみイラストレーター」として活動中。情報誌や雑誌、企業カレンダーなどを多数手がける他、「家の空間に飾って楽しい作品」をテーマに作品を発表・販売中。最近の個展に「KIMEKOMI」(2018年、新宿区・クー・ギャラリー)など。